日常診療メモ・XXII
2,3の腹壁異常の治療(その2)
清水 直太郎
1
Naotaro Shimizu
1
1九州大学温研産婦人科
pp.726-731
発行日 1965年9月10日
Published Date 1965/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409203332
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III.腹壁術創の破綻
これは多くは腹壁術創の感染,あるいは術後の強い嘔吐,咳嗽でおこる。腸管の脱出がなくとも筋膜へ腱膜縫合が破綻しておれば,確実に再縫合して瘢痕ヘルニアの発生を防ぐ。腱膜縫合が障害されていなければ皮膚,皮下組織の再縫合をするか,あるいは幅広い絆創膏でよせ合わせ,原則としてガーゼ・ドレンをおく。すなわち細長ガーゼを少し捻じたものを1〜数個,縫合糸間あるいは絆創膏帯間で,皮膚面に垂直に腱膜〜筋膜面まで入れ,2〜3日して抜去する。
破綻した創孔から腸管が脱出しているときは,ただちに麻酔の下に腹璧の再縫合をする。温めた生理食塩水で湿した大きな圧抵布を,脱出した腸管にかぶせつつ腹壁と腸管との間に挿入し(腸管を圧迫しないこと),創縁を鉗子で挟んでもちあげ,組織層を確認しつつ多層縫合をする。筋層には絹糸で2,3のZまたはU縫合を補助として追加する。腹壁腹膜が縫合のときに破れやすく,筋膜縫合も強く緊張して各層の縫合に不安があるときには,腹壁全層を通ずる太い絹糸(ときに2本)の結節縫合をする。抗生物質を数日間投与するはか必要に応じて鎮吐,鎮咳剤を用いる。
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