Japanese
English
原著
胎児および新生児の下垂体について
On the pituitary of fetus and newborn infant
官川 統
1
,
数井 忠一
1
Toru Kankawa
1
1東京大学医学部産科婦人科学教室
pp.763-766
発行日 1957年11月10日
Published Date 1957/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409201635
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1.はしがき
輓近に於ける内分泌学の発展は,一連の副腎皮質ホルモンの驚異的臨床効果の相次ぐ報告,及び其れに関連してSelye,Reilly及びLaborit等の業績を加え,益々著しいものとなつて来る感がある。而して,特に注目され,且つ又殆んど未知の分野は間脳,下垂体であるといつても過言ではなく,其れに関する知識の殆んどが,未だ憶測の域を脱していない。扨て胎児及び新生児の内分泌学的研究は既に述べた如く42),今,其の機能を知ろうとして母体に僅かの侵襲を加えるだけでも流産が起る可能性が大であり,又胎盤という介在物の存在に依り勢い,間接的とならざるを得ない。故に今回対照とする胎児及び新生児の下垂体機能に対する研究は困難を極め,其の多くが,動物実験成績より人類のそれを推定する傾向に止まるのは必然である。胎児下垂体の胎生早期に活動を開始しているであろう事は例えば,無脳児の副腎皮質が正常児に比し著しく発育不良であり,屡々剖見時,見出す事が困難な事実(即ち下垂体の存在が重大な影響を与えているであろう)よりも想像され,又Selyeの概念よりすれば胎児が子宮外生活に適応する為にも下垂体系の活溌な活動が期待される理である。而して其の研究は単に内分泌学的興味のみに止まらず,近時宣伝される未熟児のホルモン療法にも関連して重大であり,われわれが此処に諸家の成績を紹介する所以も存するのである。
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