原著
トリコモナス腟炎の臨床的観察
山本 文男
1
1山口赤十字病院産婦人科
pp.1019-1025
発行日 1955年12月10日
Published Date 1955/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409201283
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1.緒言
1837年Dorneが腟トリコモナスを発見し,19ユ6年Hoehneによりその病原性が認められ,典型的化膿性腟炎の原因となる事が高唱されて以来,多数の報告があり,殊にその病原性に関してはSchröder, Loeser(1919),Haupt(1924),Schmidt,Kamniker(1926)等により論争されたが未解決のまま次第に産婦人科領域の前景より姿をひそめて終つた。然るに1940年Trusselが偶然に無菌的な増養を得,Adler&Putlvertaft(1944),Johnson,Trussol & Jahn (1945)がペニシリンを利用して純粋培養に成功して以来,本症に対する関心はにわかに深まり,我が国に於ても浅見(1952),真柄,網野,横内(1953)等の新抗生物質利用による純粋培養法の改良,位相差顕微鏡の出現は本症の研究に拍車をかけた。加うるに細谷(1952)により発見された抗黴〜抗生物質たるトリコマイシンを始め諸種抗生物質及び新化学療法剤の出現により,本症の治療効果も大いに挙り,近年本症に関する報告は益々増加した。併し,諸家の報告を見ても尚お,その感染径路,再発性及び病原性に関しては多くの疑義があり未だ充分満足し得る解決に至つていない。然も本症は後述の如く日常外来にて比較的多数発見され,外来診療中の重要な部門を占めており,臨床上ゆるがせに出来ない疾患である。
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