診療室
トリコモナス腟炎に就て
渡部 博
1
,
矢島 鑑
1
1日赤本部諏訪病院産婦人科
pp.33-38
発行日 1954年1月10日
Published Date 1954/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200970
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1.緒言
膣トリコモナス(以下腟トと略記する)はDo-nńe (1837)により發見され,Höhne (1916)が之に基く腟の炎症たる所謂トリコモナス腟炎(以下ト腟炎と略記する)を記載したが,其の病原性に就ては其後種々論議せられ末だ確定的なものを見ない。一般にト膣が存在する場合には黄色稀薄,膿性又は白色泡沫性の帶下が増加し,屡々外陰の掻痒感を訴える者があり,又腟壁が充血し,藥液による洗源に際して疼痛を伴うことがある。これ等の症状が果して腟トの毒性によるものか或は共存する多くの雑菌によるものかは不明であるが,治療により腟トが死滅すると共に帶下が著明に減量し,掻痒等の自覺症状も消退して肉眼的にも明らかに正常状態に恢復し,腟内容の性状も改善される點等から見れば,腟トが腟炎の原因となり得ること,從つて所謂ト腟炎の存在は十分可能と考えざるを得ない。
從來ト腟炎に對する統計的観察,腟トの培養實驗,其の治療効果等に就て數多の報告があるが,未だ幾多不明な點があり,統計的觀察に就ても比較的少數例のものが多く,從つてその結果も千差萬別である。
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