特集 原爆症の10年
産婦人科領域に於ける原爆症
山岡 一行
1
,
木原 康彦
1
,
日山 成吾
1
,
浅田 清子
1
,
杉山 眞
1
1広島市民病院産婦人科 広島市産院
pp.943-948
発行日 1955年11月10日
Published Date 1955/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409201267
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第1章 緒言
広島市に於ける原爆による死亡者は急性障害作用に因るもののみでも20万人を超えるといわれており,原爆炸裂時の爆風,熱風,及び放射能の障害作用が何如に強烈苛刻を極めたか推測に難くない所である。
この障害作用の影響は9年を経た今日尚お「原爆慢性障害症」として認められるのであつて,この様な原爆の影響によつて発生し得る疾患としては,(I)慢性貧血症,(II)白血病,(III)再生不良性貧血,(IV)バンチ氏症候群,(V)ホドキン氏病,(VI)広島病といわれる自律神経失調症,(VII)悪性腫瘍等が注目されている。然し之等の疾患はいずれも原爆と無関係にも発生するものであり,且つ被爆者に於けるこれ等疾患の病態に原爆に特異な所見は否定されている現況に鑑み,原爆症の判定は容易でない事が解る。広島原爆対策協議会は2km以内の被爆者に発生した之等の疾患を原爆症として取扱う方針を一応採用したが距離を以つて解決出来ない所に当事者の悩がある。
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