綜説
産婦人科領域に於ける副腎皮質
赤須 文男
1
1東邦大学医学部産婦人科
pp.5-13
発行日 1953年1月10日
Published Date 1953/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200768
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緒論
生体に種々のStressが加わつて生理状態が攪乱されようとした場合に,生体はこの動揺を可及的少くして生理的平衡状態を維持しようと努力する。この生物学的の動的平衡をCannonはHo—meostasisと呼び,この場合に危険防止のために惹起される反應をEmergency reactionと名付け,その反應を起す中核をなすものをSympath—icoadrenal-systemとなした。然し近年の研究はこのアドレナリンと自律神経のみに限局したCannon説から発展し,下垂体が又極めて重要な位置を占めるものであることが認められ,下垂体副腎系という言葉が現われ,Selye (1936)のいうSterssに対するAlarm reactionを中心とするGeneral adaptation syndromeが極めて重要視されるに到つた。
Stressの中には,酸素缺乏,冷却,火傷,手術操作,出血,細菌感染,毒素の注入,知覚神経の刺戟等が含まれているが,近年は精神的外傷も加えられ精神身体医学Psycho-somatic medi—cineの問題も取上げられている。私は更に広くStressを解釈し,我領域に於ては大きくは妊娠,分娩,産褥現象も,小さくは排卵現象もこの中に含まるべきものと考えている。以下本誌編集者よりの依頼に應じて我領域に於ける副腎を中心とする問題の一端に就いて愚見を述べて見たいと思う。
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