綜説
産婦人科領域に於ける温泉療法
田中 良憲
1
1岡山大學温泉研究所産婦人科部
pp.495-498
発行日 1952年11月10日
Published Date 1952/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200701
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緒言
慢性炎症や内分泌疾患に姑息療法が廣く行われる産婦人科領域にあつては,温泉療法は廣い應用が見出される。此の事は何れの産婦人科學及び温泉學の成書にも記載されて居り,種々の温泉に富む本邦では適應を誤らなければ,有効にしてしかも快適な療法と言うべきであるが,實際は醫師により等閑視され勝ちであつて,多數の患者は各自勝手に湯治場に赴くが爲に,反つて病症の増悪すら見る状態である。近時我國の温泉醫學は各所に研究所が開設されてより頓に活發となり,作用機轉も漸次明らかになりつつあるが,獨り産婦人科領域に於ける此の方面の研究は微々たるものであつて,成書の記載も本邦に於ける確實な症例を缺き一般論に留つて居り,此の事が亦本領域に於ける研究の發達せざる原因ともなつて居ると思われる。依つて此處には最近發表され明らかになつた事項に限つて記述し,本療法に封する注意を喚起したいのである。しかしながら温泉療法は局所のみならす,全身状態に影響を及ぼす事大にして,其の様相は複稚雑であるので,先す総論を述べ,次に各種疾患への應用に入る事とする。
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