病理解剖
水野潤二博士訳「癌の綱胞学的診断」を手にして
長谷川 敏雄
1
1東大
pp.736
発行日 1954年12月10日
Published Date 1954/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409201136
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予て聞いていた名古屋市立大学水野助教授訳「癌の細胞学的診断」が愈々上梓され,最近出版元の医学書院から1部届けられて来た。之は在ボストンMassachusetts General Hospitalの婦人科担当病院たるVincent Memorial Hospital附属Vincent Memorial Labo-ratoryに於けるMrs.R.M.Grahamを首班とする8人(執れも女性)のスタッフに依て書かれたThe Cyto-logic Diagnosis of Cancerの邦訳で,早速手にとつて見ると,B5版本文218頁の丁度手頃な本で,着手以来2年余の日子を費して漸く完成したものとのことであるだけに,瀟洒たる装訂,洗練された訳文,さては絢爛眼を奪う図版等々総てに於て実に堂々たる出来栄えである。
先ず訳文の点であるが,「訳者の言葉」として「……原文に忠実にしかも読み易く分り易いようにするのに相当苦心した」云々とあり,又訳者が嘗て筆者に「只1語の適訳を考えるにも数日を費したことさえある」云々とも述懐されたことがあつただけのことはあつて,其の行文のすらすらとしてわかり易く;完全に日本語化しており,こうした訳本にあり勝な一種の「臭み」が全然見られぬことは,之が一体飜訳書なのかと怪まれる位で,今更のように訳者の苦心のほどが偲ばれる。
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