原著
頸管粘液の結晶形成機序について
安武 豊志男
1
1日本鋼管鶴見病院産婦人科
pp.143-147
発行日 1954年3月10日
Published Date 1954/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200999
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まえがき
不妊症の治療上に於いて従来差程に重要視されていなかつた頸管因子たる頸管粘液の持つ意義は益々重要になつてきた。特に人工授精の発展と共に該液の検査は不可欠のものとなつた。最近Maxwell Rollandは該粘液の塗抹,自然乾燥標本を鏡検してエストロゲン活動期に恰もシダの葉様構造(fern-leaflike structure)が現われるのを認め,排卵の決定,エストロゲンの消長,妊娠との関係について知見を述べており,遅ればせながら本邦にてもこれに関する若干の迫試報告が発表せられている。本年夏New Yorkに於いて開催されたThe Ist World Congress of Fertilityand Sterilityに恩師安藤教授が列席せられた際に,本問題に関する様々の結晶像が著しくとりあげられてあつた旨が述べられた。然し従来のいずれの発表も該現象の再確認という点に止つていて,その本態という点ではLandstromlang, Ryd—hery等が食塩とMucinが関係するという域を出ていないようであつて本邦の報告では大谷及び吹田,大石等は頸管粘液に食塩を加えて類似像を認め食塩がこれに関与するだろうと推定しており,吹田等がMohr氏法によつてClの定量を行つている程度にすぎない。私は頸管粘液中の何が結晶をなし,何故にシダの葉様模様を現はしてゆくかについて刻明に此れを追究し,この現象を解明し得たので報告する。
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