速報
再び交換輸血法術式の検討
河合 信秀
1
,
安田 幸夫
1
,
丸山 正義
1
1東京大學産科婦人科學教室
pp.113-115
発行日 1954年2月10日
Published Date 1954/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200993
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緒論
Rh-Hr式血液型,その他と新生兒赤芽球症についての知識がひろく認識されるにつれ,我國にも本症の症例が著しく増大せる傾向にあり,近時その報告例を屡々散見する樣になつた。一方本症に對する處置としては妊婦の抗體産生に對する脱感作が最も理想的であることはいうまでもないが,未だ不成功に終つている現在,交換輸血がその唯一,最善の治療法となるが,河合は先に「臨婦産誌」(6巻10號昭27年)上に本術式の,主として兒血管系に對する影響について老察を加え,本法施行に際しては綿密なる注意を要し,特に手技の最も簡單なためにひろく普及している臍帶静脈よりする方法は兒の將來に機能疾患,或は智能發育障害等の重大なる障害を與える可能性が大であるから出來得れば避くべきであることを述べた。余等はそれに對する讀者各位の御批判を期待したのであるが,何等注目されなかつたのは遺感である。
最近當教室に於いて,R1不適合による赤芽球症に交換輸血を族行し(飯山學士による),術後高度の核黄疸にて死亡した1例を剖検する機會を得たが,交換輸血を行わない3例の核黄疸剖検例と比較検討を加えた結果,先に河合が豫測した如く,其の腦血管系に明らかに交換輸血による組織學的變化を認めたので此所に併せて報告し,再び臍帶靜脈よりする方法が兒の將來に重大なる障害を與える可能性の大なることを強調するものである。
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