原著
トリコモナス並にカンデイダ發育阻止物質の效果と腟内pHとの關係
室岡 一
1
,
宮崎 知惠子
1
1關東遞信病院産婦人科
pp.17-24
発行日 1954年1月10日
Published Date 1954/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200967
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1.緒言
産婦人科領域でも近時カンディダが問題視されるようになり,外來患者に就てカンデイダの出現率,症状,治療劑等に關する諸報告があるが,未だ治療法は確説がない。之が理由としては症状が輕いか無症状で患者に殆んど苦痛を與えないためと,一般にカンデイダ症の治療法が充分に確立されていないためとによるものと思われる。婦人科領域では殆んどその總てが腟カンデイダであるため,内臓カンディダ症に比較すればその治療法は容易ではあるが,一旦發症したカンデイダによる糜爛,帶下,掻痒,膀胱炎,腎臓炎,敗血症は仲仲難治であるから,我が領域に於ても本症の治療適劑の出現することが切望されるわけである。現今迄に表われた數種の優秀なカンデイダ發育阻止物質は試驗管内成績では極めて良好であるが,生體應用時の効果の減殺が著明である。その原因として血清の添加が効果を著減すると一部説明されているが,生體内の過程は複雑であり,試驗管内過程の如く單純ではないが,治療効果の一指針として試驗管内成績も無視することはできない。現今帶下の主因をなしているトリコモナス,カンデイダを殺菌することを目的とした各種帶下治療劑が現われつつあるが,之等製劑の中にはアルカリ状態で溶解し,酸性で藥劑の沈澱を起すものがかなり多くある。かかる製劑は賦形劑中に重曹等入れてアルカリ状態として作用させている。
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