特集 産婦人科診療の進歩
産婦人科領域に於ける惡性腫瘍の化學療法
野嶽 幸雄
1
1慶大産婦人科教室
pp.781-790
発行日 1953年12月1日
Published Date 1953/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200938
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緒言
惡性腫瘍化學療法の臨床上の成績は何れの領域に於てもなお實驗的領域に止り,その完全な勝利を豫測するには時期尚早である。それにも拘らず益々現實的な重要性を帶びてきたのは惡性腫瘍に對する化學療法の登場の必然性があること,惡性腫瘍が化學療法の對象となりうることが了解されてきたことによる。その主な根據は腫瘍發生の原理と,腫瘍細胞の動態とに關する研究が飛躍的に發展し,それに伴い,必然的に對策の道が開拓されてきたからである。今日腫瘍化學療法の發展に對しては臨床家も,基礎醫學者も等しく負擔を分ち,同じ比重の役割を有する筈のものであり,相互の協力が切に要望される。從つて最終的貢献に寄與すべき積極的支持の立場をとるか否かは現在臨床家の當面する第1の問題である。特に産婦人科領域に於てはトピツクとも稱すべき多彩な對象の多くが取扱われているわけであるから,今後産婦人科醫に課せられた任務は重大である。本文に於ては主として研究の分野と方針,治療の原理に就て述べる。これらの事項の解説が,今後治療上の發展を期する上に最も必要な段階であると信ずるからである。
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