特集 産婦人科診療の進歩
女子性器結核症の最近の動向
貴家 寬而
1
1東北大學醫學部産婦人科教室
pp.791-802
発行日 1953年12月1日
Published Date 1953/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200939
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女子性器結核症の問題は前世期の末に始まる。本症に對するHegar1)(1886)の手術療法,Ber-kely2)Williams3)の結核性腹膜炎に對する開腹手術療法が賞用されて以來,數多の手術別出標本の検索が行われ,本疾の研究,特に病理解剖學的研究は一段と飛躍を途けた。當時の性器結核症は現在からみると可成り進行したものを意味し臨床的にも所見の比較的はつきりしたものに限られていたが,Sockaert及びFerin4)(1939)が子宮内膜診査組織片の検鏡法を婦人科診斷法として採用した結果,僅か9ヵ月間に7例の子宮内膜結核を發見し,過去五ヵ年の發見例5例に比して其の數の多いのみならず,所謂臨床症状の明確をがく潜在性の性器結核の多いことを強調した。其の後子宮内膜診査組織検鏡法が廣く常用され,又不妊症患者の研究が廣汎に行われるに從い本症の發見數は増加するようになつた。
本症の臨床的確診法として開腹手術所見及び前記検鏡法の他に,結核菌の證明法として,子宮内膜組織片の磨細物,月經血,腟内容物等の動物接種法が行われていたが,これに代つて最近10年間に直接これらの被検物を培養する方法が容易に簡便に行われ,常用検査法として用いられて來うに從い本症の症例は更に増加して來ている。
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