原著
腦下垂體後葉血壓亢進ホルモン(Vasopresin)拮抗物質に就いて
並木 勉
1
,
岡田 和親
1
1名古屋大學醫學部産婦人科教室
pp.640-644
発行日 1953年11月10日
Published Date 1953/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200911
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緒言
妊娠時腦下垂體前葉が著明な變化を來す事は周知の事實である。從つて同時に後葉の機能も當然亢進するであろうと思われる。然るに從來幾多學者の研究によりその機能亢進の像を窺い得なかつたのは拮抗物質の存在により一樣に平均化される爲であろうとのL.Seitz (1929)1)の見解以來腦下垂體後葉ホルモンに對する拮抗物質の研究が進められた。
Oxytocinに對する拮抗物質に就てはFekete(1930)2)に始り,Jones a. Shlapp (1936)3)は肝腎及脾のグリセリンエキース中に,河村(昭16)4)は小腸内に該拮抗物質を認めた。最近Page (1946)5)は妊,産,褥婦に就き該物質の消長を,又森(1946)6)は更にその性状についても實驗的検索を加えている。並木(1950)7)は廣汎にわたり研究を進め,該拮抗物質は血清中のグロブリン屑に含有され,ヒスタミナーゼや抗ホルモンと異り種屬特異性無く,一種の防禦酵素と見る可きものであり,加水分解酵素で且蛋白分解酵素の一であり,後葉Oxytocinを基質とするApofermentにして,非妊時には主として網内皮系統にて産生され,妊娠時には更に胎盤に於ても産生されるものであろうとし,本酵素をOxytocinaseと命名したのである。又Werle, Semm u Enzenl ch (1950)8)は同様な破壊酵素を血漿及赤血球中に認めている。
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