講座
腦下垂体後葉ホルモンについて
石北 明
1
1東京共済病院産婦人科
pp.24-29
発行日 1957年4月1日
Published Date 1957/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201245
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脳下垂体は発生学的にも,組織学的にも,又内分泌学的にも夫々全く異つた前葉,中葉,後葉の部分から成り立つて居る.この脳下垂体の抽出液を注射すると血圧が上昇する事が始めて認められたのが1895年の事であるが,続いて1898年にホーウエルによりこの成分が脳下垂体の後葉に含まれて居る事が発見された.1901年にマグヌス,シエーフアー等が1906年にデールがこの後葉中に子宮収縮作用及び抗利尿作用のある事を認めた.
この血圧上昇,子宮収縮,抗利尿の3作用は1物質によつて起るのか,又はそれぞれ異なる物質によるかについて,同一のホルモンが異つた作用を示すにすぎないとする者もあるが,子宮収縮と血圧上昇作用とは多くの研究者により夫々異つた後葉ホルモンの作用に帰すべきものであるとされて居り,実際血圧上昇作用は強いが子宮収縮作用の極く弱い抽出物,子宮には強力に作用するが血圧には大なる影響のない抽出物が得られて居る.即ち子宮収縮成分のオキシトチン及び血圧上昇と抗利尿作用を有する成分のバゾプレシンの物質が分離されているので,これら成分は脳下垂体中では結合して1物質として存在するのかも知れない.併し現状では血圧上昇ホルモンと抗利尿ホルモンとの分離には成功して居らず,唯動物実験によつてのみ証明されて居る状態であるが今回は理解し易い様に夫々のホルモンについて記述を進めて行きたいと思う.
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