症例研究
子宮腟上部切斷術後に偶發した特發性自然氣胸の1例
松下 亨
1
1群馬縣多野病院産婦人科
pp.479-480
発行日 1953年8月10日
Published Date 1953/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200882
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緒言
所謂自然氣胸とは肺に於ける變化が肋膜面に波及するか,又は肋膜自體が瘢痕その他に依り脆弱化するため自然に破れ氣管と肋膜腔とが交通し,吸氣が肋膜腔内に侵入することに依つて起るもので,その原因に就いては大部分は肺に於ける結核性病變に因るものとされているが,生利は昭和11年迄に於ける本邦の報告24例中17例は原因不明であるとし,野中は10年間に於ける17例中只1例に肋膜炎を認めたのみで,其他の13例は原因不明であつたと述べ,北川も亦自驗5例中家族に肺結核及びその既往症を認めたものは2例のみで,他は原因不明であつたとしており,一見肺結核と無關係と見られる様な例が最近20年間に30数例報告されている。その直接の誘因としては激しい咳嗽發作,呼吸運動を主とし,其他内科的胸腔穿刺に依るものが多く,開腹術に續發したものは昭和26年迄の20年間に虫垂炎手術後に起つた加藤の1例を見るに過ぎない。私は最近術前胸部の理學的所見並びにレ線像上明白な肺結核を認めなかつた患者に,子宮腟上部切斷術施行後7時間目に起つた1例を経驗したので,以下その概要を報告する。
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