原著
腟内容中に於ける正常細胞の位相差顯微鏡觀察並に性周期による影響
原田 浩
1
1京都府立醫科大學産婦人科學教室
pp.445-452
発行日 1953年8月10日
Published Date 1953/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200876
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I.緒論
腟内容に於ける細胞學的研究は始めは主として齧歯類の動物に於て行われその周期的變化が追求されたのであるが,人腟内容に於けるそれはPa—panicolaou4)による研究發表以來幾多の追試をみて居り現在も尚研究されつつある。然しこれ等は何れも固定並に染色による細胞の觀察でありその爲に煩雑な操作を施さねばならないのと生態觀察を行つていない憾がある。それ故余はこの生態觀察の目的にて位相差顯微鏡を使用し人腟内容に於ける細胞の觀察を行つた所普通の顯微鏡,暗視野裝置等の場合には見えないか或は不明瞭である細胞内の内部構造の幾多が(例えば顆粒,Mitoch—ondria,核の構造等)從來の塗抹染色標本よりも詳細に見えること及び操作も簡單であることを經驗したのでこれ等細胞の生態學的觀察に應用してみたのである。即ち腟内容中の細胞が固定染色される前の"なま"の状態で從來の方法による細胞形態學と如何なる構造上の類似或は相違があるかを知らんとして本研究を行つたものである。即ち本篇に於ては腟内容中の正常細胞に就てその所見を述べるのであるが,性成熟期の健康婦人では當然性周期が營まれて居る。從つて性周期による腟内容細胞の消長をも記述することとする。
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