症例研究
流産後の産褥破傷風の2例並びに産婦人科領域に見られる破傷風の特殊性に關する考察
早川 愛壽
1
,
橋村 利則
1
1大阪市立醫科大學産婦人科學教室
pp.154-160
発行日 1953年3月10日
Published Date 1953/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200803
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1.緒論
創傷傅染病として瓦斯壞疽とならび危險視される破傷風は不潔なる創傷より感染し,外科領域では枚擧に遑ない程の報告が行われ,その治癒率は最近では早期治療の開始,高單位の破傷風馬血清注射及びペニシリン注射により好成績を得ているが,産婦人科領域に見受けられる破傷風は成書にある如く,その殆んどが流産後の産褥破傷風であり,死亡率は未だ69%を占めていると云うことは實に憂うべき現状である。
私共は茲に不幸な轉帰をとつた流産後の産褥破傷風の1例及び人工妊娠中絶後の産褥破傷風の1例を報告するものであるが,私共はこれらの例より,外科領域に見受ける外傷性破傷風に比して産婦人科領域に見る破傷風,特に産褥破傷風に於て死亡率が高いのは腟及び子宮頸管の生物學的性状と,子宮の解剖學的位置等が破傷風菌の増殖を促し,ひいては毒素の産生を多からしめ,又感染病巣の剔出に際しても解剖學的に容易なる手術ではないが故に當然かくの如き結果を招くものと考える次第である。
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