Nursing Study
破傷風について
武田 須美子
1
1関東労災病院
pp.84-86
発行日 1963年6月1日
Published Date 1963/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661911961
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
病気にはいろいろありますが,原因が身の内にあるもの(たとえば,癌や高血圧など)外からくるもの(怪我や細菌によるもの)があります。内からくるものは,ドックにでもはいって,よく調べてもらわないとわからないこともありますが,原因が外からくるものは,心がけひとつで予防できるものです。そこで私は,怪我をした時に,そこから侵入して,人間の生命をおびやかすもののひとつである破傷風について,現在私たちの病院で行なわれている,予防および治療看護につき一つの症例を取上げて研究してみました。
概略
病原体の発見は1884年に,ニコライアが1889年に,北里が純培養に成功しております。本病の原因である破傷風菌は,自然界に広く分布し土壌や街頭にも多数発見されております。したがって,何らかの創傷を受けた場合,本菌が創内に持ち込まれる機会は,実際には極めて多いにもかかわらず,破傷風罹患率が,割合少ないのは,破傷風菌が嫌気性菌で,芽胞が毒素を分泌するためには,この発育増殖に好適な環境が必要であります。一般には他の菌と混合感染とか,創内に壊死組織や異物があれば嫌気性菌の培地となりやすく,本病の発生の危険があること,創傷の早期治療が正しく行なわれれば,発病は起こりにくいことぐらいは,たやすく理解できることだと思います。問題は医治を要しないような,スリ傷,刺傷などが破傷風の原因となる場合が,実際にはもっとも多いと云えるのでしょう。
Copyright © 1963, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.