症例研究
産褥性破傷風の1治驗例
井出 米夫
1
1東京遞信病院外科
pp.237-239
発行日 1951年6月10日
Published Date 1951/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200496
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緒言
破傷風の治療は最近高單位の血清Penicillin.使用等により豫後も次第に改善されてはいるが尚重大な外科的傳染症の1つである。殊にその毒素が一度び中樞神經系と結合すると特有強烈な神經症状を起して,潜伏期の短いものは多く死の轉歸をとる。就中こゝに述べんとする分娩又は流産に原因する産褥性破傷風は,新生兒破傷風と共に豫後最も不良とされHalben-SeibはBiologie u.P—athologie d.Weibes中に100%の死亡率をもつとさえ述べている。又Kentmann (1900)は45例中42例Spiegel (1918)は20例中12例,更に最近の41例中25例Sigwart (1938)は21例中13例という死亡例の報告がある。Rosaは潜伏期が1週以内91%,2週以内82%,それ以上50%の死亡率という。本邦でも小川氏は20年間に5例をみてその4例まで死亡した述べ,其の他古賀,日野,塚田,松岡,下平氏等計5例中4例死亡例の報告がある。滅菌法の普及した今日では正當の介補を受けた産褥性破傷風は極めて稀で,墮胎の爲の異物挿入等に起因するものが多い(古賀,小川,松岡,塚田,下平,渡邊,高村,矢島氏等の症例)數少い治驗例は古賀,石原,小川,矢島,渡邊,W.Arboast,K.Jaroschka,E.Bernhard等がある。
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