症例研究
卵巣出血2例について
齋藤 幹
1
1東京医科歯科大学産婦人科教室
pp.33-38
発行日 1953年1月10日
Published Date 1953/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200773
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腹腔内出血の原因の多くは子宮外妊娠中絶によるものであるが又卵巣自身よりの出血に起因する事が稀でない。西欧においては之について文献上多数例の報告があるが本邦婦人科関係においては比較的に少ないようである。之は卵巣出血の自験例が公にされないで個人の手もとで終つてしまう為ではなかろうかと思われるので以下之について述べ注意を換起したい。卵集出血は下腹痛を主訴とする関係上,婦人科のみならす外科においても患者は取扱われ,その際は子宮外妊娠破裂又は急性虫垂炎の診断を受け,開腹されて初めて卵巣出血によるものである事を知る場合が多い。以上のように術前の診断が困難であるという点では臨床上稍々興味が薄いが,稀な疾患ではなく又ホルモン分泌の源泉である卵巣よりの出血であり,子宮外妊娠破裂と間違えられ易い事等については興味深い。最近著者は卵巣出血の例を経験したので之を述べると共に先人の業績よりこの考察を試み本邦例について観察を行つた。なお以下2例は急性虫垂炎の診断で外科において開腹術をうけ,その際に卵巣出血に起因するものである事が判明した。
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