診療室
開腹術後の癒著防止輕減に有要な注意
岩田 正道
1
1社會福祉法人三井厚生病院
pp.410-411
発行日 1952年9月10日
Published Date 1952/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200674
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今日までに再開腹の手術例を少からず經驗しておるが,その大多數に於て前手術野乃至腹創に輕重の癒著が残されておるのは蓋しやむを得ぬことであろう。然し數多い癒著例のうちには極めて輕くかつ限局性のものもあつたが,腹腔を開き或は手術野を開放するにかなりの時間苦労する程に廣汎,強度の癒著を殘しておるものも稀でなかつたし,また前手術は安易なものゝであるにも拘わらずイレウス症状乃至イレウスを招致した數例に遭遇しておる。とは云うもの他面何の癒著をも残していなかつた症例も決して少くなかつたし,殊に相當煩雑であつたと推量される前手術の割合に大した癒著を殘していないものもある。即,開腹術後の癒著は決して不可避のものでなく,適切な注意と操作によつて或程度防ぎうべく,少くとも著しい癒著を避けうることは疑いない。なお又開腹術後に今までにない下腹痛,殊に身體働作時の下腹部牽引痛を訴える患者には殆ど例外なく癒著を證するに,明かな癒著がありながら後で訊ねても格別の異常を感じていなかつた者もあることゝて,術後癒著による症状の有無,程度は必ずしも癒著の廣狹乃至程度によつて左右されるものではなく癒著の部位並に臓器の如何にも關連することも云う迄もない。
ともあれ術後癒著をなるべく殘さぬよう,手術に當つて萬全の注意と配慮すべきは云う迄もないが,どうしたらこれを防ぎ或は最小限度にとゞめうるであろうか。
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