原著
初乳の臨床的及び細胞學的觀察
安武 豊志男
1
1慶應義塾大學醫學部産婦人科教室
pp.288-294
発行日 1952年7月10日
Published Date 1952/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200642
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第2項中性多形核白血球
1.乳汁内所見 多數のプレパラートによる塗抹標本に見る中性多形核白血球(以下N白血球と略す)は概ね縮小型のものが多く核濃縮 染色質濃染に陥つてクロマチンの核紋理は不明となり,時に膨大型のものではCo—ntourさえも認められない事が多い。原形質内中性嗜好顆粒もGiemsu, Mag—でGiemsaの染色でも染色される事は稀である。核は2分葉以上の所謂成熟型のみで通常の血液塗抹標本にみる如き鮮明像を呈するものは少い。これらは胞體内に脂肪滴の痕跡を染別することはできないがNadi反應及びPeroxydase反應は明かに證明する。今數10枚のプレパラートにつき核紋理も顆粒も鮮明で最も原型を保持しているものを撰び,血液塗抹標本と比較するに細胞體は恰も偽足様突起を出してアメーバ様運動の様相のまゝ固定染色されたものが屡々認められる。Leidenfrost氏現象を呈する銅板上で固定した後Ehrli-ch氏染色による中性顆粒の表出は鮮明に證明できる。フオルマリンガス或はアルコール固定による場合は細胞質内に單に1コの小なる空泡を有するものから大小種々なる數コの空泡を有するもの迄存在し時には初乳小體の一型を彷彿せしむるものまで混じている。乳汁にTürk氏液を加えると細胞體及びその分葉核は鮮明に表出される。ズダーンIII液を更に添加すると細胞質内脂肪滴を染別でき,前記固定油による室泡が脱脂脂肪滴と分る。
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