原著
男女共學と初經來潮期との關係に就いて
山尾 悟
1
,
藤田 長利
1
1長崎大學醫學部産婦人科學教室
pp.68-69
発行日 1952年2月10日
Published Date 1952/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200584
- 有料閲覧
- 文献概要
月經は性熟婦人の外兆であり,初經の來潮する時期に關しては,月經の性状と共に種々論ぜられて來た。周知の如く,月經は内分泌刺戟とそれに對する反應として生するものであるが,初經が來潮するには一定の年齢的範圍を保つとは云え,個人的な差違を有している。所謂無月経を招來する純醫學的な疾患が思春期に存在すれば,一時的に或は永久的に,初經の來潮を遅延せしめる結果になるであろう。然し,この點は一應擱くとして,之に對し,社會環境が初經の來潮に作用することに就いては,種々,報告されている。文献上には氣候,地域,人種等によると思われる初經期の差違は,殆んど一致して認められている様であるが反對者もある。職業,教育,生活程度,環境,遺傅等に起因すると思われる差違に就いては一定の説を有しないのである。
戰後,松本,山田,原氏等は,初經期の遅發を報告しているが,之が日本婦人の趨勢であるか,將又今次大戰の一産物であるか,その斷定に苦しむのであるが,所謂戰時無月経が,榮養の變化,肉體の過勞,精神負擔等に原因するとすれば,或は初經期の遅發も,戰爭の影響と充分考えられる。
Copyright © 1952, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.