Japanese
English
精神病理懇話会より
疏通性の精神生理学
Psychophysiology of Rapport
井村 恒郎
1
,
木戸 幸聖
1
T. Imura
1
,
K. Kido
1
1日大神経科
1Dept. of Neuropsychiat. Nihon Univ. School of Med.
pp.143-151
発行日 1962年3月15日
Published Date 1962/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200415
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疏通性(rapport)の語は,精神医学的面接における医師と患者の対人関係をあらわす用語として,われわれには親しみぶかい。しかし,この語がどういう事態をさしているかを,われわれは成書や講義から学んだのではなく,面接の指導をうけたり,実習をかさねたりなど,臨床の実際(praxis)を通じて経験的に知つている。いいかえると,面接における疏通性の様態についての体系的な知識なしに,面接でえた印象を積みかさねて,われわれは疏通性の概念を身につけている。
事実,臨床的に疏通性の有無・良否が云々されるときには,面接をした医師の主観的な疏通あるいは非疏通(zuganglich od. unzuganglich)の体験がもとになり,そのうえに,面接中に観察された患者の応対態度の適切か否かについての判断が加わつている。ふつうの診断面接では,この2つが疏通性の判定根拠になつているが,そのさい,面接の行なわれる状況や面接中に観察することのできない医師自身の面接態度については―疏通性の如何を決める要因となる場合もあるのに―考慮の外におかれる傾向がある。そして,判定された疏通性の有無・良否は,すべて患者に帰せられて現症に数えられがちである。
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