--------------------
胞状鬼胎妊娠中に腟壁に發生せる絨毛上皮腫の1例
武藤 友美
1
1京都府立醫科大學産婦人科教室
pp.435-438
発行日 1949年11月10日
Published Date 1949/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200278
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
1 緒言
胞状鬼胎妊娠時子宮壁には毎常Robert Meyer(1)の所謂絨毛上皮侵入Chorial Invasionの状態が存在すると云われたが,此の際Frankl,(1)の唱うる如く,絨毛上皮或は絨毛が何らかの機會に其の母地を離れ,血行により栓塞としての路を辿り各所に遊離到達,共生存に適する條件に保たるゝ時始めて惡性的増殖を始むることがある.即ち胞状鬼胎妊娠中既に卵着部以外に絨毛状皮腫を發生することは比較的稀であつて,文献に徴するに,Apfelsucht u. Aschoff(5)(1896)の報告以來,外國にては25例,(4,6,7,9,10,12,13,14,16,17,18,20,21,22,23,24)本邦にては24例,(16,28,29,33,34,35,36,37,39,40,42,43,44,46,47)の報告がある.
其の好發部位としては,腟壁に發するもの多くし,且腟壁に發生する絨毛上皮腫それ自身の豫後は一般に比較的良好であつて,自然又はそれに近く治癒せるものとして,Burdzinski,(11) Dunger,(26) Kelly u. Techer,(3) Neumann,(3) Vieneberg,(43)松岡,(31)東大(2例)(48)等の報告がある.私は最近52歳11回經産婦の胞状鬼胎妊娠中,腟前庭に絨毛の轉移による血腫の形成と腟壁絨毛上皮腫の發生を認め,鬼胎分娩後該絨毛上皮腫の自然脱落を惹起した興味ある1例に遭遇したので並に追加報告する次第である.
Copyright © 1949, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.