増刊号 産婦人科処方のすべて─すぐに使える実践ガイド
産科編
VII 偶発合併症妊娠
SLE/リウマチ様関節炎/Sjögren症候群
山下 隆博
1
1東京大学医学部附属病院女性診療科・産科/女性外科
pp.287-290
発行日 2014年4月20日
Published Date 2014/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409103740
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疾患の概要
全身性エリテマトーデス(SLE)
全身性エリテマトーデス(SLE)は自己免疫疾患の1つで,多臓器障害を示す慢性全身性炎症性疾患である.生殖可能年齢女性に好発するため合併妊娠も珍しくない.多くはすでにSLEの診断・治療がなされたうえでの妊娠であり,妊娠前から内服しているステロイドの量の調節を内科医と相談しつつ行うことになる.SLEは妊娠後に増悪することが多いとされ,SLEの病態が安定していない時期の妊娠は避けるよう指導する.SLE合併妊娠は流産,早産,妊娠高血圧症候群,母体血栓症,胎児発育不全,子宮内胎児死亡,新生児ループスなどが増加するハイリスク妊娠であり,ループス腎炎による腎機能障害の妊娠中の評価も重要である.
リウマチ様関節炎
リウマチ様関節炎は関節の炎症を主体とする慢性炎症性疾患で,やはり生殖可能年齢の女性に多い.SLEと異なり妊娠中は軽快することが多いが,出産後には逆に増悪することが多い.リウマチ様関節炎の妊娠・胎児への直接的影響は否定的である.病態が安定していない時期には妊娠中に使用できない薬剤が必要であり,妊娠は避けるよう指導する.
Sjögren症候群
Sjögren症候群は涙腺や唾液腺の分泌低下を特徴とする慢性炎症性疾患である.女性に多いが,発症のピークは40~50歳台で,妊娠に合併する頻度はそれほど高くはない.通常,妊娠前に診断されており,妊娠が症状を悪化させることはないとされる.重症例では早産や低出生体重児の頻度が上昇する可能性が指摘されている.また抗SS-A抗体,抗SS-B抗体が胎児房室ブロックや新生児ループスの原因となりうるため,注意が必要である.
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