増刊号 産婦人科処方のすべて─すぐに使える実践ガイド
産科編
VI 異常妊娠
妊娠高血圧症候群/子癇
関 博之
1
1埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センター
pp.255-258
発行日 2014年4月20日
Published Date 2014/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409103730
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疾患の概要
妊娠高血圧症候群(pregnancy induced hypertension : PIH)は母体死亡や未熟児出生の原因疾患の1つであり,母児双方の予後に重要な影響を及ぼす疾患である.PIHの原因の詳細は不明であるが,two-stage disorder theoryが提唱され,かなり明らかになってきた.すなわち,immunogenic maladaptationによるabnormal placentationとその後のらせん動脈のremodeling障害により,低酸素状態が惹起され,絨毛細胞から抗血管新生因子(sFlt-1,sEng)が産生され,胎児胎盤循環や母体循環での血管内皮障害が発症する.血管内皮細胞障害によって惹起された血管攣縮と血液濃縮は,母体では高血圧,蛋白尿,凝固線溶系の亢進など,胎児では子宮内胎児発育遅延(intrauterine growth restriction : IUGR)や胎児機能不全などの臨床症状を発症させる.
子癇は「妊娠20週以降に初めて痙攣発作を起こし,てんかんや二次性痙攣が否定されるもの.痙攣発作が起こった時期により,妊娠子癇,分娩子癇,産褥子癇とする」と定義される.その病態は,高血圧に伴う脳還流圧上昇が脳細動脈血管の脳循環自動調節能力(平均動脈圧が60~150 mmHgでは脳血流の恒常性が保たれている)を破綻させ,脳血管が強制的に拡張させられ,血液が血管外に漏出して脳浮腫を生じ,高血圧脳症(子癇)が発症すると考えられている.
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