連載 FOCUS【新連載】
放射性物質による環境汚染の影響を危惧する妊娠・授乳婦人への対応―日本産科婦人科学会はどのような情報提供を行ってきたか
水上 尚典
1
1北海道大学大学院医学研究科産科・生殖医学分野
pp.1376-1381
発行日 2011年11月10日
Published Date 2011/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102838
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放射性物質による環境汚染に学会から情報発信
2011年3月11日,magnitude 9.0の巨大地震が日本を襲った(東日本大震災).まもなく巨大津波が押し寄せ,各地(主に北海道,東北,関東沿岸)に甚大な被害をもたらした.その1つに東京電力福島第一原子力発電所(以下,福島原発)事故がある.地震により炉心の活動は停止したが炉心溶融(melt down)を避けるために持続的冷却の必要があった.しかし,そのための予備電源すべてが失われ,地震数時間後に炉心溶融が起こったとされる.
放射性物質による環境汚染が現実のものとなり,日本産科婦人科学会(当時,吉村理事長)は放射能被曝から妊娠婦人・授乳婦人・乳児を守る必要性から,大至急の課題として「学会員ならびに一般向けお知らせ作成」を決断した.第一報(2011年3月15日公開)は主に放射性ヨウ素(131I)被曝に対する安定ヨウ素剤予防服用に関してであったが,まさにその当日(2011年3月15日)から翌日にかけて安定ヨウ素剤予防服用が必要であった市民が出現した可能性がある.その後,学会ではホームページを通じて,7月21日までに計6回(3月15日,3月16日,3月24日,4月18日,5月2日,7月21日)の見解を発表し,妊娠婦人や授乳婦人に情報提供を行った.本稿では,それらの情報の要点を紹介し,放射性物質による環境汚染の影響を危惧する妊娠婦人・授乳婦人にどのように対応したらよいのかについてまとめる.
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