今月の臨床 母子感染─新しい制御戦略
胎内感染のリスクと対策
3.風疹ウイルス
関 博之
1
1埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センター
pp.996-999
発行日 2011年8月10日
Published Date 2011/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102748
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風疹患者数は年々減少してきている.1982~2002年までの定点あたりの風疹患者数の推移を見ると,1982年と1987年に流行がみられ,1988年,1992年,1993年にも軽度の流行がみられたが,その後2000年以降はほとんどみられなくなった(図1)1).これは,1994年の予防接種法改正により,1995年4月から中学生のみならず生後12~90か月までの小児にも風疹ワクチンが定期接種として実施されるようになったことが要因と考えられる.ワクチン接種により,現在は風疹の全国的な流行は抑制されているが,ワクチン接種率が不十分であると,近い将来わが国でもギリシアでみられたような全国規模の風疹流行2)が危惧される.特に,2001年度感染症流行予測調査で抗体保有率の低かった15歳女性は2011年には25歳となる.小規模な地域流行でも先天性風疹症候群(congenital rubella syndrome : CRS)患児が出生していることを考えると,より多くの対象者が風疹ワクチンの接種を受けられるような積極的な取り組みが必要となる.
CRSに対するウイルス特異的な治療はなく,社会的な防衛手段として風疹ワクチンの接種率を上げること,個人的な防衛手段として女性は妊娠前にワクチンを接種することにより風疹に対する免疫を獲得しておくことが重要である1).特に,風疹未罹患または風疹ワクチン未接種の妊娠希望の女性は妊娠の2か月以上前に任意接種としてワクチン接種を受けておくことが望まれる.
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