今月の臨床 母体と胎児の栄養学
産褥と新生児の栄養管理
1.授乳女性の栄養管理
佐久間 幸子
1
1地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立母子保健総合医療センター栄養管理室
pp.696-702
発行日 2011年5月10日
Published Date 2011/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102677
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はじめに
ユニセフ(国連児童基金)とWHO(世界保健機関)は,1989年に共同声明で発表した「母乳育児を成功させるための10か条」(表1)を世界のすべての産科施設に守ることを呼びかけ,1991年には,この「10か条」を尊守し実践する施設を「赤ちゃんにやさしい病院(BHF)」に認定する制度を開始するなど,世界的に母乳育児推進運動を展開してきた.
日本においても「日本母乳の会」が中心となり,母乳育児の保護・推進・支援が,これまで乳房管理に携わってきた助産師だけでなく母子医療にかかわる医療従事者とその産科施設,そして母親に広がり,さらに2007年厚生労働省が策定した「授乳・離乳の支援ガイド」では,妊産婦や子どもにかかわる保健医療従事者が,授乳の支援に関する基本的考え方を理解し,支援を進めるための基本的事項が5つのポイント(表2)としてとりまとめられ,実践例も示された.
このように母乳育児の推進と支援は深化しているが,授乳女性の食生活は,いまだに,「食べると母乳が出にくい」「母乳の質が悪くなる」などの理由で,肉や青魚・乳製品・茄子・餅などを禁止する言い伝えを信じていたり,母乳が母子に与える有益性を理解していても,出産後は育児が生活の中心となり自分自身の食事が疎かになったりする現状がある.
授乳女性の栄養管理の目的は,産後の母体の回復と母乳分泌の促進,そして育児のための健康な体作りである.授乳女性が置かれている現状を踏まえながら,その目的を達成することが,母乳育児を成功に導くうえで重要となる.
授乳女性の栄養管理は,着目すべき重要な側面であり,忘れてはならない要件と考える.
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