今月の臨床 婦人科内分泌療法─病態の理解と正しい診断に基づく対処・治療のポイント
腫瘍・類腫瘍
5.乳腺症
坂井 威彦
1
,
岩瀬 拓士
1
1癌研有明病院乳腺センター
pp.608-611
発行日 2011年4月10日
Published Date 2011/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102658
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1 概 念
乳腺症(mastopathy)とは,痛みや硬結などを主訴とする,乳腺の良性疾患に対して用いられる言葉である.欧米ではfibrocystic disease,mammary dysplasiaなどといわれてきた.しかし,従来疾患として捉えられていた状態は,乳腺の正常な発達と退縮からの逸脱であるという概念の出現により1),欧米の成書では乳腺症を1つの疾患として扱うことはなく,それに対応する用語も使用されなくなった.日本では,“乳腺症”という用語が,医療者,患者一般にも広く知られている.定義があいまいであるため,臨床症状や画像所見,病理組織所見に対して使われる以外に,保険病名として用いられることもある.現在“乳腺症”は疾患名ではなく,正常な発育と退縮からの逸脱であるという概念に基づいた,乳房の多岐にわたる良性(正常)の状態を表す用語として用いられている.
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