今月の臨床 婦人科内分泌療法─病態の理解と正しい診断に基づく対処・治療のポイント
更年期・老年期
3.更年期出血
望月 善子
1
1獨協医科大学産科婦人科
pp.536-539
発行日 2011年4月10日
Published Date 2011/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102645
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
1 概 念
日本産科婦人科学会の用語集には,更年期出血の定義はないが,「更年期」におけるすべての出血を更年期出血と考えてよい.更年期とは,性成熟期から老年期への移行期に当たる.加齢とともに卵巣機能が衰退し,月経不順から永久的な月経の停止,すなわち閉経に至るが,この閉経をはさんだ約10年間をいう1).わが国の女性の自然閉経年齢の中央値は50.5歳であるので,個人差は大きいもののおおよそ45~55歳ぐらいまでが「更年期」となる.更年期出血には,卵巣機能の不安定さからくる機能性出血や悪性腫瘍などの器質的疾患が原因となる出血,そして萎縮性変化に伴う出血など,非常に多彩である.
月経と分娩・産褥期の出血は生理的な出血であるが,それ以外はすべて非生理的な出血であり,不正出血(不正性器出血)といえる.したがって,更年期出血のほとんどは不正出血の範疇に入る.不正出血は子宮からの出血だけでなく,腟や外陰部,肛門,尿路も原因臓器となる.表1に不正出血を引き起こすと想定される器質的疾患をあげる.Novak's Gynecologyによると,不正出血の頻度は閉経周辺期では無排卵性出血,子宮筋腫,子宮頸管および内膜ポリープ,甲状腺異常の順であり,閉経後では外因性ホルモン使用,子宮内膜癌を含めた子宮内膜病変,萎縮性腟炎,外陰部・腟・子宮頸部の腫瘍の順である2).
Copyright © 2011, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.