今月の臨床 HRTの新ガイドラインを読み解く
【HRTの適応】
1.更年期障害
望月 善子
1
1獨協医科大学産科婦人科
pp.804-809
発行日 2009年6月10日
Published Date 2009/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102114
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はじめに
45歳から55歳ぐらいの更年期女性では個人差はあるものの,漠然とした変化しやすい身体的愁訴をもつことが多い.具体的には,疲れやすい,動悸がする,肩がこる,腰が痛い,体がだるい,のぼせるなど,訴えは全身にわたり非常に多彩である.これらの症状は不定愁訴と呼ばれ,加齢に伴う身体的・精神的機能の低下と卵巣機能の低下,すなわちエストロゲン分泌の低下が背景にある.
HRTは,治療,予防,健康増進という3つの側面をもつが,減少してしまったエストロゲンを補うことにより,症状の改善や緩和をはかろうとすることは,根本原因に働きかけるという意味で合目的的であり,その効果は確実かつ顕著に現れると予想できる.HRTの安全性を考えるきっかけとなったWHI報告では,心血管疾患や脳卒中など生活習慣病に対するHRTのネガティブ評価は示されたが,エストロゲン使用の基本的な適応疾患である更年期障害に対しての検証はされなかった.
本稿では,更年期障害とは何かという疾患概念について説明したうえで,ガイドラインに示された項目を概説するとともに,さまざまな症状に対するHRTの有効性について探ってみたい.
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