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月経困難症と経口避妊薬(oral contraceptives : OC)
月経困難症は月経に随伴して起こる病的症状をいい,痙攣様の激しい下腹部痛と腰痛を主とした症候群である.分泌期内膜から産生されるプロスタグランディン(prostaglandin : PG)による子宮筋の収縮が疼痛の主要な原因と考えられている.月経時にみられる吐き気,嘔吐,腰痛,下痢,頭痛などの全身症状はPGとその代謝物質が体循環に流入したために起こるものと説明されている.黄体期後期に血中プロゲステロン濃度が低下すると,アラキドン酸の産生とcyclooxygenase経路が活性化される.その結果,分泌期子宮内膜のPGレベルは増殖期の約3倍に増加し,月経時にはそれ以上に上昇する.機能性月経困難症の患者では,無症状の女性に比較して子宮内膜におけるPG産生が多い.月経中のPGの放出は,月経開始から48時間の間に起こり,月経困難症の症状が最も強い時期に一致している.PGのなかでもPGF2αが主要な原因物質と考えられている.
OCは子宮内膜の増殖を抑制し,PG濃度が最も低い卵胞期初期の状態を形成することで作用を発揮する.避妊目的だけでなく,経血量や周期の調整ができるという利点もある.ピルによって機能性月経困難症患者の90%以上で疼痛が軽減されるといわれているが,無作為化比較試験(RCT)によるエビデンスは少ない.コクランレビューのメタアナリシスによると,プラセボあるいは無治療をコントロールとした低用量あるいは中用量ピルによるRCTはこれまでに6つあり,プラセボに対してオッヅ比は2.01と約2倍の疼痛改善効果が報告されている1).しかしながら,レビューアーが結論で述べているように,これらの試験はいずれも1960から1970年代と古く,現在主として用いられている低用量ピルのデータや症例数が少なく,試験の質は低い.
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