今月の臨床 ここが知りたい―PCOSの最新情報
最新のPCOS診断基準
久具 宏司
1
1東京大学医学部産科婦人科学教室
pp.143-147
発行日 2010年2月10日
Published Date 2010/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102270
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はじめに
多囊胞性卵巣症候群(polycystic ovary syndrome : PCOS)は,生殖年齢女性の5~8%,月経不順患者の多くを占め,罹患率が比較的高い症候群である1).従来欧米では,病態の本質である男性ホルモン高値に重点を置いた診断基準に基づいているのに対し,わが国では,日本人女性にみられるPCOSの特徴を要点とした診断基準が用いられていた.1993年に日本産科婦人科学会(日産婦)生殖内分泌委員会により決定されたこの診断基準2)では,症状として不可欠な月経異常,普遍的にみられる卵巣の多囊胞所見,さらに内分泌的な裏付けとして日本で頻度の高い高LH血症の3項目を必須とし,ほかにいくつかの参考項目が設けられた.ただし,この基準では,高アンドロゲン血症があるにもかかわらず血中LH値の高値がみられない例がPCOSと診断されないなどの問題点があった.さらに,欧米での基準との違いから,わが国で行われた研究が国際的な評価を得られないという事態も起こっていた.
そこで,現在のわが国におけるPCOSの実態を把握し,それを基にわが国における新たな診断基準を策定することを目的として,日産婦生殖内分泌委員会において検討がなされた.新たな診断基準は,2007年の学会総会において承認され,発効した.本稿では,新たな診断基準策定の背景とともに診断基準の適用法について概説する.
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