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はじめに
婦人科領域の代表的な悪性腫瘍である,子宮頸癌,内膜癌,卵巣癌,卵管癌はいずれもplatinum化学療法(化療)に対して感受性を有する(platinum-sensitive).卵巣癌はplatinum併用化療に対する感受性が最も高いと考えられているが,必ずしも正しくない.筆者らが1980年代から指摘してきたごとく,組織型により化療に対する感受性が明確に(極端に)異なる疾患である.すなわち,漿液性,類内膜,移行上皮癌はplatinum-sensitiveで奏効率90%以上(移行上皮は最も感受性が高く,cisplatin単剤の奏効率はほぼ100%),粘液性,明細胞はplatinum-refractory(耐性)でplatinum化療に対する奏効率は限りなく0%に近い1, 2).後述するごとくGynecologic Oncology Group(GOG)を中心としたmega trialsから導き出された(結果ではなく)結論に基づき,最近10年以上にわたり,組織型に無関係に卵巣癌の1st regimen(第一選択regimen)はpaclitaxel-carboplatin(TC)とされている3, 4).GOGによると,卵巣癌のkey agentsはcisplatinとcarboplatinであり,生存期間を指標にした効果は同等で,副作用の点で後者が使いやすいというコンセンサスがある3, 4).Paclitaxel単剤はkey agentにはなり得なかった(GOG 132)5).それでもTCが今日まで1st lineとして広く使用されているのはGOGのpolitical powerによるものと考えられる.しかしながら,彼らのデータ(エビデンス)を忠実に解釈すると,抗腫瘍効果,副作用の両面から,卵巣癌のkey agentはcisplatinであり,carboplatinはoptionとするのが妥当である4).頸癌ではcisplatin(optionとしてcarboplatin),内膜癌ではcisplatinとanthracycline(adriamycin, epiadriamycin)がkey agentsである.
さて,「QOLを考慮した化療」というテーマからイメージされることは,1)初回regimenあるいはprotocolの違い(同一regimenで投与法が異なる)によるQOLの比較,2)手術とplatinum併用化療6サイクル以上による初回治療後の残存,再発に対する2次治療における薬剤選択,あるいは投与法の工夫,3)治療のタイミングに無関係に,薬剤投与量減量,あるいは投与間隔延長による副作用軽減,その結果としてQOL低下の軽減,などであろう.しかしながら,これらの議論の前に,化療の本来の目的が「腫瘍細胞のtotal cell kill」にあることを忘れてはならない.根治すれば,化療中および直後の一時的QOLの低下は,致命的後遺症を残さない限り問題にはならない.再発例であっても,二次的化療が奏効し,化療のみで,あるいはその後に手術を追加し,寛解,治癒する例も稀ではない.本稿では,再発例も含め,寛解,治癒の可能性が少しでもある症例に対して実施されるplatinum化療に関して,QOLを考慮した化療について論じたい.
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