今月の臨床 QOLを考慮した婦人科がん治療
【妊孕能温存】
6.胚細胞性卵巣腫瘍の妊孕性温存療法の適応と限界
中原 健次
1
,
関口 真紀
1
,
倉智 博久
1
1山形大学医学部産科婦人科学講座
pp.1517-1523
発行日 2009年12月10日
Published Date 2009/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102233
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はじめに
卵巣の胚細胞腫瘍(germ cell tumor)に関して,日本産科婦人科学会と日本病理学会(1990年)では,WHO分類に基づいて分類し,それぞれさらに良性,境界悪性および悪性腫瘍に分けて提示している1)(表1).このなかの悪性腫瘍は,全卵巣悪性腫瘍の5%未満の腫瘍群であるが,その頻度以上に重要な臨床的特徴を持つ(表2).
悪性胚細胞腫瘍(malignant germ cell tumor)は,1970年代までは致死的な腫瘍であったが,術後の化学療法がVAC療法,PVB療法そしてBEP療法を経て予後が飛躍的に改善したことにより,現在では妊孕性温存手術が標準的とされている1).
進行した悪性胚細胞腫瘍,特に卵黄嚢腫瘍(yolk sac tumor : YST)ではBEP療法でも予後不良のことがあり,化学療法中も慎重な経過観察が必要である.ブレオマイシンの総投与量が300mgを超えると間質性肺炎の頻度が上昇すること2),またエトポシドの総投与量が2,000mg/m2を超えると二次性発がんの可能性が増大する1)ので,BEP療法(1コース当たりブレオマイシン約90mg,エトポシド約750mg)の許容コース数は原則として4コースまでが妥当である.
以下,本邦の卵巣がん治療ガイドラインを基にまとめを行い,その後悪性胚細胞腫瘍の臨床的特徴について述べ,最後にいまだ予後不良とされる卵黄嚢腫瘍についてまとめてみたい.
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