- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
平成18年6月に成立したがん対策基本法では,癌による死亡者を20%減少させることが目標となっている.癌がわが国の死亡原因の第1位になったのは昭和56年である.近年では,女性の3人に1人が生涯の間に癌になり,毎年約13万人が癌で死亡している.がん対策基本法では,癌による死亡数を20%減少させるという目標達成のために,「癌の早期発見」が掲げられ,「がん検診受診率50%の達成」が重要な要素とされている.
昭和56年当時女性の癌死のトップは胃癌であり,子宮頸癌に代表される子宮癌は死因の第2位だった.その後の日本女性の性活動,妊娠・出産状況,栄養状況,平均寿命の延長などは,罹患癌の種類に大きな変化をもたらしている.頸がん検診の普及が子宮頸癌死亡率を大きく低下させたと高く評価されている1)一方で,近年わが国では子宮体癌の急激な増加が問題となっている(図1).
このような体癌の増加傾向を背景に,1988年には老人保健法に体がん検診が取り入れられた.体癌を頸がん検診の細胞診で発見するのは困難である2)ことから,検診の手段として内膜細胞診が選択された.老人保健法で内膜細胞診による体がん検診が採用されて以来,内膜細胞診はわが国で広く普及してきたが,内膜細胞診の評価は必ずしも高いものではない.疫学的には,「新たながん検診手法の有効性の評価」報告書3)で「検診による死亡率減少効果の有無について判断する適切な根拠がない」という厳しい評価を受けている.それに加えて,内膜細胞診の精度,判定基準など,細胞診断学的な問題点も大きな課題とされている.しかし,体癌の増加傾向,内膜細胞診の広い普及を考えると,内膜細胞診の判定基準の確立は急務である.本稿では,北里大学病院が提唱してきた内膜細胞診の判定基準を概説し,細胞診の成績を報告するとともに問題点を考察する.
Copyright © 2009, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.