今月の臨床 HRTの新ガイドラインを読み解く
新ガイドラインのポイント
水沼 英樹
1
1弘前大学医学部産科婦人科
pp.781-785
発行日 2009年6月10日
Published Date 2009/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102111
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はじめに
わが国ではHRTガイドラインとして,2001年に厚生省長寿科学総合研究の3年間の活動を集約した「高齢女性の健康増進のためのホルモン補充療法ガイドライン」が上梓され1),また2004年にはその改訂版が発行されて,わが国のHRTの施行法,注意点などに関してのコンセンサス形成に大きな役割を果たしていた2).このようなHRTを取り巻く上昇機運の中,WHIショックと称されるWomen's Health Initiative中間報告が行われ3),以来,HRTは世界的に大きな後退を余儀なくされてしまった.このWHIの中間報告がもたらした社会的影響は少なくなく,特に医療者にとって,副作用の発生を必要以上に恐れるあまり,HRTを本当に必要としている女性に対してもその使用を忌避するなどの弊害も出てきていた.WHIで得られた結果は特に米国においてそれまでの安易な使用に対する警鐘となったが,一方では科学的に詳細な検証が加えられ,現在ではどうすればより安全なHRTが行えるかについての知識も集積されてきた.日本産科婦人科学会生殖内分泌委員会では日本更年期医学会との協同事業として本邦におけるHRTガイドライン(案)の作成に当たってきたが,本ガイドライン(案)3)は所定の手続きを経て本年4月に正式にガイドラインとして認定されるにいたった.今回認定された新ガイドラインはWHI以降に得られた新たなエビデンスに基づき作成されたものであり,新しいコンセンサス形成に活用され,HRTの標準化に寄与することが期待される.本稿では本ガイドライン作成に携わった立場からそのポイントを述べることとする.
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