今月の臨床 妊婦の感染症
妊婦の感染─胎児への影響と対策
4. トキソプラズマ―IgG avidityとmultiplex-nested PCR法を用いた先天性トキソプラズマ感染症の管理
山田 秀人
1
,
西川 鑑
2
,
山本 智宏
3
,
水江 由佳
4
,
西平 順
5
1北海道大学医学部産婦人科
2NTT東日本札幌病院産婦人科
3ジェネティックラボ
4札幌イムノ・ダイアグノスティック・ラボラトリー
5北海道情報大学経営情報学部医療情報学科
pp.839-843
発行日 2008年6月10日
Published Date 2008/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101793
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先天性トキソプラズマ症
トキソプラズマ(Toxoplasma gondii : T. gondii)は,胞子虫綱,真コクシジウム目,サルコシスティス科に属する原虫であり,ネコ科の動物を終宿主とする.中間宿主域はきわめて広く,ヒトを含むほ乳類や鳥類などの温血動物に感染する.ヒトへの感染経路には3つが考えられる.①トキソプラズマ)に初感染したネコの糞に排出されるオーシスト(接合子嚢)を摂取した場合,②感染した動物の肉を生や不十分な加熱調理で食べ,シスト(嚢子)を摂取した場合,ならびに③タキゾイト(栄養体)が母体から胎児へ入り感染する場合(先天性トキソプラズマ症)である.
トキソプラズマ感染では無症状であることが多く,ときに頸部リンパ節腫脹や発熱を伴う.母体の初感染で,胎児は先天性トキソプラズマ症を発症する.妊娠中・後期の初感染では胎児感染率(妊娠15~30週で約20%,31週以降で60~70%)は高いものの,不顕性や軽症が多い.一方,妊娠初期(~14週)の初感染では胎児感染率(10%以下)は低いが,症状がより重症(流死産,脳内石灰化,水頭症,脈絡網膜炎,精神運動障害)になる1).先天性トキソプラズマ症の1~2%は知的障害もしくは死亡に至り,4~27%は脈絡網膜炎を発症し片側性視力障害を起こす2, 3).
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