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■はじめに
最近,米国産婦人科学会から満期前破水の管理に関する技術情報が発表された.満期前破水例は早産の大きな原因となり,新生児不良転帰の原因となるため,その取り扱いに苦慮させられる.残念ながら,新しい「武器」は見当たらない.このコーナーでも何回か満期前破水の管理を取り上げたが,再度,ここで証拠に基づく満期前破水の管理を取り上げる.
満期前破水例は,産科的管理や臨床的な個々の状況とは関係なく無治療の状態だと,ほとんどは1週間以内に分娩となる.破水時の妊娠週数が早ければ早いほど,破水から分娩までの期間が長くなる.満期前破水例では,臨床的に明らかな羊水感染が13~60%に認められる.感染の頻度は妊娠週数が早いほど高率となる.胎盤早期剥離の合併率は4~12%であるが,重篤な母体続発症は稀である.最も深刻な続発症は胎児の未熟の問題である.特に,肺の未熟の問題が最も一般的な合併症である.また,子宮内感染は児の神経学的発達障害のリスク増加と関連がある.
適切な遂娩時期は,児の未熟性と肺の成熟度の比較で決定される.妊娠32~33週になると,胎児の未熟の程度は低くなるので,羊水による胎児肺成熟度検査で肺の成熟が確認されれば,誘発分娩とする.肺成熟が確認されなければ待機的管理のほうが利点がある.妊娠32~33週の満期前破水例に対する副腎皮質ホルモンの有効性は十分に検討されていないが,副腎皮質ホルモン使用を勧める専門家もいる.しかし,絨毛膜羊膜炎のリスクが増加するので,妊娠34週以降の母体への副腎皮質ホルモン投与は勧められない.妊娠34週以降は遂娩が望ましい.
妊娠24~31週までは,母児に禁忌がなければ待機的管理が行われるべきである.その場合に母体への抗生物質投与は破水から分娩までの期間を延長させるという証拠があるので,抗生物質を使用する.また,1コースだけの副腎皮質ホルモン母体投与も新生児罹患を減少させるうえで有用である可能性がある.
母体体温上昇(38.0℃以上)は感染を示唆するが,さらに子宮圧痛と胎児頻脈が加わると,よりいっそう感染の可能性が高くなる.白血球数は,ほかに感染徴候がない場合は非特異的である(特に副腎皮質ホルモンを使用している場合).
最近の研究では,頸管長が1~10mmの場合に7日以内に分娩となる率は83%というデータがある(30mm以上の場合は18%).しかし,この研究は小規模(24例と17例)で,信頼度は高くない.
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