今月の臨床 不妊診療─現在の課題と将来展望
ARTに移行する前に行うべき内視鏡検査・手術
立花 眞仁
1
,
村上 節
1
1東北大学医学部産婦人科
pp.1440-1445
発行日 2007年12月10日
Published Date 2007/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101616
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はじめに
昭和61年以来,日本産科婦人科学会では体外受精・胚移植などの生殖医学の臨床実施に関して登録報告制を敷いている.平成17年度の報告によれば登録施設数は627に及び,年間116,604周期のART治療が行われて,年間18,168人の児が出生しており,本邦での累積出生児数は135,757人にのぼる.これを支えるのは,627を数える多数のART登録施設であり,これが本邦における不妊症診療の大きな特徴である.これらの施設の多くは内視鏡手術の設備を持たない小規模施設と考えられ,目覚しく発展し続けるART技術や昨今の女性の社会進出,晩婚化などの社会的な要因と相俟って,不妊治療は従来の妊孕性を回復させるmacroscopicな治療から直ちに結果を求めるmicroscopicな治療であるARTにシフトしてきている.しかしながら,医療介入は必要最小限とするのが医療の原則であり,不妊症診療においては可能であれば自然妊娠をはかるのが望ましいのは明らかである.
本稿ではARTに移行する前に施行しておきたい内視鏡検査・手術について,原因不明不妊症と原因別疾患群(子宮内膜症,卵管閉塞,卵管留水症,多嚢胞性卵巣症候群,子宮筋腫,子宮内膜ポリープ,子宮奇形)に対して自他の知見を交えて紹介し,現在の課題と将来の展望を考えてみたい.
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