今月の臨床 ここまできた分子標的治療
分子標的治療のターゲット
1.細胞増殖
二村 友史
1
,
井本 正哉
1
1慶應義塾大学理工学部生命情報学科
pp.1224-1229
発行日 2007年10月10日
Published Date 2007/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101578
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はじめに
1980年代,遺伝学を基にした生物学の躍進によりがん遺伝子が続々と同定され,さらにその遺伝子産物の多くが細胞増殖シグナル伝達分子のホモログであることが明らかになっていくにしたがい,がんの進展には正常な細胞増殖機構を制御しているタンパク質(プロトオンコジーン)の発現量や構造異常(がん遺伝子)が密接に関連していることが示された.その結果,がん遺伝子産物や細胞増殖シグナル伝達分子を標的とする“分子標的薬”は,従来の細胞傷害性の抗がん剤とは異なり優れた選択性が期待できると考えられるようになった.
ポストゲノム時代に突入した今,分子標的志向の創薬研究は,マイクロアレイによる新たな腫瘍マーカーの探索やケミカルゲノミクスを駆使した全タンパク質機能の解析により,疾患原因因子の網羅的同定とそれらを標的とした薬剤開発を目指すいわゆる次世代ゲノム創薬へと発展している.本稿では,細胞増殖を阻害する標的としてプロテインキナーゼ,ファルネシルトランスフェラーゼ,プロテアソーム,分子シャペロン,ヒストンデアセチラーゼに注目し,それぞれに対する分子標的薬の開発状況を概説する.
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