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1 診療の概説
閉経前女性の総コレステロール(TC)は男性より低値を示すが,閉経以後に急増する.トリグリセリド(TG)も閉経以後に急増し,70歳以上では男性より高値となる.1990年と2000年の結果によると,TC値が220 mg/dl以上を示す高TC血症の割合は,近年減少傾向にあるものの,50歳以上の女性では依然として約2人に1人は高TC血症の状態にある(図1)1, 2).
エストロゲンは脂質代謝に関与することが知られている.エストロゲンは肝臓や末梢組織の低比重リポ蛋白コレステロール(LDL─C)受容体の数を増加させ,LDL─Cの取り込みを促進することにより血中LDL─C濃度を減少させる.更年期以降ではエストロゲン分泌の減少によりこれらの脂質代謝経路が機能せず,高脂血症を呈するようになる.高TG血症はそれ自体で心血管系疾患の独立した危険因子とみなされているが 3),それ以外にLDL粒子がより小さなsmall dense LDLの産生に関与している.Small dense LDLは肝臓のLDL受容体と親和性が乏しいため血中に停滞しやすいうえに酸化変性を受けやすく,通常のLDLに比べて動脈硬化を起こしやすいと考えられており 4),超悪玉コレステロールといわれている.近年わが国で行われた高脂血症患者に対する大規模臨床試験であるMEGAスタディの結果,食事療法+スタチン製剤投与を行うことで冠動脈疾患を33%減少させることが明らかになった.この試験の対象者は女性が大半を占めることから,閉経後高脂血症に対する積極的治療の必要性が証明された 5).また,II型糖尿病患者を対象として,フェノフィブラートを投与し,心血管イベントについて検討されたFIELDスタディでは,女性の高TG血症に対する積極的治療の必要性が示されている 6).
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