今月の臨床 産婦人科外来ベストナビゲーション
ここが聞きたい105例の対処と処方
II 内分泌
【高脂血症】50.家族性高コレステロール血症家系の妊婦です.妊娠初期は問題なかったのですが,妊娠28週の検査で高脂血症と診断されました.
高橋 一広
1
,
高田 恵子
1
,
倉智 博久
1
1山形大学医学部産科婦人科学
pp.513-515
発行日 2007年4月10日
Published Date 2007/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101483
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1 診療の概説
家族性高コレステロール血症は,高コレステロール血症,高低比重リポ蛋白コレステロール(LDL)血症,腱黄色腫,早発性冠動脈硬化症を特徴とする疾患である.この疾患はLDL受容体の遺伝的異常により血中LDLの細胞への取り込みが低下した結果,LDLが高値を示すものである.遺伝形式は常染色体優生遺伝であり,対立遺伝子の片方が異常であるヘテロ接合体,両方の遺伝子が異常であるホモ接合体に分類される.家族性高コレステロール血症のヘテロ接合体は500人に1人の頻度で認められ,血中コレステロール値は260~500 mg/dlであることが多い.一方,ホモ接合体は100万人に1人の頻度で認められ,血中コレステロール値は500~1,000 mg/dlを示すことが多い 1).遺伝的な素因を背景に発症する家族性の高脂血症は,家族性高コレステロール血症のほかに,家族性複合性高脂血症や家族性III型高脂血症がある.それぞれの診断基準を表1に示す.
妊娠中はエストロゲンの増加に伴い血清脂質は増加し,非妊時に比べて総コレステロールは50%,トリグリセリドは150~300%増加する.妊娠28~32週の総コレステロールの基準値は249±40 mg/dl,トリグリセリドの基準値は219±81 mg/dlと報告されている 2).血清脂質の増加は心血管系疾患のリスク因子であるが,Framingham studyによると,妊娠回数と心血管系疾患の発生には相関がみられないと報告されている 3).
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