今月の臨床 無痛分娩・和痛分娩ガイダンス
IV.硬膜外麻酔分娩の合併症とその対策
硬膜外麻酔分娩の合併症とその対策
49.局所麻酔薬の硬膜下注入の予防と対処について教えて下さい.
大島 正行
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1日本医科大学附属第二病院麻酔科
pp.488-489
発行日 2004年4月10日
Published Date 2004/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101223
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1 はじめに
硬膜下腔は,硬膜とくも膜の間に存在する潜在的空間で,漿液性の液体が少量存在し,向かい合う膜を湿らせている.脊髄くも膜下腔と交通はない.腰部より頸部で大きく,外側背側で広い(図1).
偶発的な硬膜下注入は,DeSaram1),Dawkins2)により報告された.
吸引試験では,自然または吸引でも陰性で,麻酔効果がまだらである.予想外の広範囲の感覚および運動神経ブロックで,瞳孔散大,高位交感神経ブロックなどの症状を呈する.その症状は20分程度遅れて発生し,脊髄くも膜下注入では1~2分で発生するのとは対照的である.硬膜下ブロックの持続時間は短い.造影所見のみが確定診断である3~6).
故意に硬膜下腔を穿刺する方法は,抵抗消失法で硬膜外腔を確定し,優しく圧をかけて針を180度回転させる7).硬膜外穿刺の際に針の回転を行うと硬膜下腔穿刺となる可能性が高い.
脊椎手術を受けたことのある患者では,瘢痕,牽引により硬膜外腔が薄く,硬膜下腔が広い可能性があり,偶発的な硬膜下腔穿刺の可能性が高い8).
死体を用いた研究では,Tuohy針を通して硬膜下腔のカテーテル留置が53%で可能で,くも膜下内視鏡にて40%が描出可能であった9).
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