今月の臨床 産婦人科診療における心のケア
更年期・老年期
5.痴呆
大藏 健義
1
1獨協医科大学越谷病院産科婦人科
pp.198-201
発行日 2003年2月10日
Published Date 2003/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101084
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はじめに
老年期の痴呆は,アルツハイマー型痴呆と脳血管性痴呆とに大別される.欧米ではアルツハイマー型痴呆が圧倒的に多く50~70%を占め,脳血管性痴呆は20~30%と報告されている1).一方,わが国では従来脳血管性痴呆のほうが多いと報告されてきた.しかし,最近の報告2)ではアルツハイマー型痴呆の割合が増加してきて,60歳以上の女性の痴呆ではアルツハイマー型が51.7%,脳血管性が24.6%であり,欧米での割合とほぼ同じになってきている.
アルツハイマー型痴呆(以下,痴呆と略す)は,ごく一部の早発性家族性痴呆を除き,一般には閉経前後からその発症が報告されるようになり,特に65歳以上の老年期に増加する.したがって,更年期・老年期外来に従事している婦人科にとっても痴呆は重要な疾患である.なぜならば痴呆を早期に発見してケアすることが大切であるばかりでなく,エストロゲン補充療法が痴呆の予防に有効であることが報告されているからである3).この痴呆はuntreatable dementiaといわれ,治療(cure)よりもcareといわれてきた.最近わが国でもコリンエステラーゼ阻害薬の塩酸ドネベジルが痴呆の治療薬として承認され,認知機能や痴呆症状での改善にある程度まで有効である.しかし,効果はあくまで一時的であり,根底にある痴呆そのものを治癒させているわけではない3).したがって,ケアの大切さは現在も変わらず,また,ケアの中心となるものは精神症状や行動に対する心のケアである.
本稿では,痴呆の精神症状(周辺症状)と問題行動に対する心のケアについて概説する.
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