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1 診療の概説
クラミジア・トラコマティス感染症の検出検査方法には,抗原検出法と核酸増幅法による検出がある.さらに,血清診断方法として抗クラミジアIgA,IgG抗体検査がある.
抗原検査法と核酸増幅法は,対象とした検体にクラミジア・トラコマティスが存在していることを示すもので,その時点でその場所において感染があることを直接確認するものである.
一方,抗体検出法は,その時点でクラミジア・トラコマティス感染があり,しかもその宿主が感染後,抗体を産生するだけの時間の経過があることを示している.クラミジア感染が起きると,抗クラミジアIgG抗体が1~2週間後には陽性となる.そして,IgA抗体が陽性になるまでには1~2か月を要するといわれている.このことは,感染直後に検査した場合には抗原もしくは核酸増幅検査が陽性であっても,IgG,IgA抗体が陰性のこともあり得るし,IgG陽性,IgA陰性ということもあり得る.
その反対のケースが抗原陰性,抗体陽性という場合であるが,それは主に次の3つの状態を示している.
その第一は,上向性に子宮頸管から子宮卵管を経由して,クラミジア・トラコマティスは容易に腹腔内に侵入し,感染状態は治療をしない限り続いている.しかしながら,子宮頸管にはすでにクラミジアは存在しないものの腹腔内感染が持続していることはしばしばみられる.このような場合には抗原陰性,抗体陽性となる.
その第二は,性器のクラミジア感染が直接治療されて治癒するか,呼吸器,泌尿器系などの感染があり治療された結果,クラミジアにも感受性がある薬剤が投与されることにより,医師,宿主ともにクラミジア感染に気づかぬまま治癒しているような場合も抗原陰性,抗体陽性となる.
その第三は,クラミジア感染を治療した結果,治癒した場合でも抗原は消失し,抗体は長期にわたり陽性として存在するので,上記と同じ抗原陰性,抗体陽性のことがある.
かつて抗クラミジア・トラコマティスIgA抗体に関して,陽性の場合は“活動性感染”を示すと誤って表現されたため,新しい感染があるときだけに抗IgA抗体が陽性となり,あたかも感染が存在する場合にだけ陽性になるかのように誤解されたことがあった.しかし,上述したようなことから,抗クラミジア・トラコマティス抗体は“感染があるとき”と,感染が終息した場合の“感染の既往”があることを示すにすぎない場合があることをよく理解することが必要である.したがって,抗体による治癒判定もできないことを認識すべきである(表1).
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