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1 診療の概説
高プロラクチン血症(高PRL血症)の原因は表1に示すように多岐にわたっており,乳房および胸壁の視診・触診だけでなく,詳細な問診も原因検索のうえで重要である.
PRL分泌は視床下部のドパミンにより抑制され,TRHやヒスタミン,セロトニンなどにより促進される.また,エストロゲンは下垂体のlactotrophに直接作用してPRL分泌を亢進させる.したがって,これらに作用する種々の薬剤が高PRL血症の原因となり得る(表2).これらの薬剤には胃腸調整剤など身近なものが多く,薬剤による二次性のものもよくみられることが高PRL血症の特徴の1つである.
血中PRL値には日内変動がみられ,夜間に高く,また表1に示した生理的原因でも変動が認められるので,測定は朝食後2時間以上経過してから,15分程度安静にした後に行うことが望ましいとされている.種々の要因で変動しやすいホルモンであるため,複数回測定することも診断に重要である.なお,標準品によって正常値が異なるので,値の解釈の際には注意が必要である.
TRHがPRL分泌を促進するので,甲状腺機能低下症が高PRL血症の原因であることもあり,甲状腺ホルモン(free T3,free T4)とTSHの測定は必須の検査である.下垂体腺腫を検索することも重要で,治療前には脳神経外科にコンサルトしておくべきである.また,稀に乳頭分泌が乳腺腫瘍によることもあるので注意が必要である.
高PRL血症が排卵障害の原因となることについては,未解明な点も多いが,PRLが視床下部のニューロンに働いてGnRHの律動的分泌を障害する中枢作用だけでなく,卵巣に直接作用することを示唆する報告も数多くみられる.
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